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武蔵大學第1回入学志願要綱
第1回学生募集時に見る「ゼミの武蔵」、リベラルアーツへの志

 2015年、記念室書庫の未整理の段ボールに詰められた書類を整理した際、戦後新学制施行後の学生募集募集関連の史料が、数年度分発見されました。そのなかでも貴重なのは、写真にある、昭和24(1949)年度の武蔵大學(当時の表記)の入学志願要項です。新制武蔵大学の第1回生募集の詳細を示す史料ですが、これまでなぜか未発見でした。
 

 もちろん、入学に関する試験や手続き、学費などはその他の記録、教務資料、理事会議事録などから判明していますが、一般に配布された第1回の学生募集の史料はきわめて重要です。しかも、現存するのは、この奇跡的に発見された1枚だけと考えられます。


 「第1回志願要項」は、いわゆる「わら半紙」(パルプ未使用)に印刷されており、縦書きで右から大学の紹介、募集人員、出願手続き、試験内容、納入金が示され、続けて教授陣紹介があり、左端は写真を貼付する受験票と切り取り線で区切られた願書になっています。受験票には出身高校名、願書には保証人・学費出資者の住所氏名、職業(具体的に)を記入するようになっているのが時代を感じさせます。

 冒頭の大学紹介文には「わが国初の七年制高等学校で培った豊富な教育経験をもとにつくられた新制大学」と明記され、「優秀な教授陣容を整備して経済理論・経営実践の各種講義と演習による専門知識」とうたって、後に「ゼミの武蔵」のもととなる小人数演習もすでに特徴としてあげられています。また「社会人、経済人として必要な高度な科学知識と文化教養を有する人材の育成」をかかげ、単科大学でありながらリベラル・アーツへの志を高く掲げている点も注目できます。

 これらの表現から新制武蔵大学が旧制高校のよい部分「小人数の実践教育」「幅広い基礎教養」を継承しようとしていたことが伝わってきます。その質を支える教授陣は、宮本和吉学長、鈴木武雄学部長以下、教養科目には哲学、歴史、日本文学、数学、心理学、物理学、化学、生物学などの広範囲な分野に、その道の第一人者をそろえ、専門である経済関連には、当代一流の研究者を教授にむかえています。また、社会政策の教授として当時44歳の大河内一男氏(1962年、東大総長に就任)が招かれています。

 

 募集人員は120名、入学試験は3日間あり、初日は国語、数学、外国語、進学適正検査で、翌日は身体検査、最終日は口頭試問となっています。入学時の納入金は入学金6,000円、学費半年分4,800円、父兄会費半年分2,400円となっています。したがって初年度の納入金総額は20,400円。ちなみに、当時の大学卒業者の会社員初任給の平均額は4,220円でした。
 なお、案内に「戦渦被害が少なく設備充実」と強調されているのも印象的です。

※写真上=志願要綱の左側、受験票部分。中=草創期の演習風景。下=各紙に掲載された学生募集広告。

 

                          (武蔵学園記念室・調査研究員 三澤正男)

 
 
 
 
 
 
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