もくじを開く

Ⅲ 武蔵大学

入試制度

 創立当初の入試制度の課題は,武蔵大学の理想を理解し,学力が高い学生をいかにして受け入れるかということであった。教職員が分担して高校を訪問し大学の特色を説明すること,国公立大学との併願者が多いことを考慮し入学試験を2回に分けて行うこと,学科試験と面接試験を全員に対して行うことなどを進めていった。しかし,受験生の増加とともにこれらの制度は継続できなくなり,全員に対する面接試験は1961(昭和36)年度入試,年2回の人試は65年度入試をもって終えることにした。

 筆記試験についても,武蔵大学の問題は思考力をみる意図のもとに作成された特色あるものであった。しかし,筆記試験以外の入試制度についての検討も必要であった。

 推薦入学は,武蔵高校からの推薦の他に,かつては特定の指定校から10~20人ほど受け入れていた。武蔵高校からの推薦を除く指定校制度は一旦廃止されたが,78年度より新しい推薦入学制度として復活した。この制度は,武蔵の建学の三理想に基づいた伝統ある校風に共鳴して,武蔵大学に学ぶことを強く希望する,豊かな能力・資質を持った優秀な生徒を,高等学校長の推薦により受け入れること,すなわち充実した高校生活を送っており,同時に武蔵大学の校風を理解している現役生徒を全国から受け入れることを目的とするものであった。

 その後,武蔵大学は,多様な資質,能力,経験を持った志願者を受け入れるため入試制度を多様化させてきた。外国の学校で学んだ生徒を受け入れるための制度として設けた「外国高等学校卒業者および帰国生徒対象入試」(85年度から),簿記1級など特定の資格を持つ志願者を対象とする「経済学部公募制特別推薦入学」(89年度から)と「経済学部社会人入学試験」(90年度から),小論文中心の「経済学部一般選抜入試B方式」(89~94年度),数学中心の「経済学部一般選抜入試C方式」(90~94年度),「英語聞き取り」を選択する「人文学部欧米文化学科一般選抜人試B方式」(91~97年度),「人文学部社会学科社会人入学試験」(95年度から),「経済学部経済学科・経営学科2科目入試」(98年度から)などである。入試多様化は,社会的要望に応えるものであるとともに,学生がその個性と能力を発揮することを期待して設けた制度であるから,現実に応じて制度を変更してきたといってよい。

 79年開始の国公立大学共通一次試験は,90年に大学入試センター試験に編成替えされ,私立大学も参加できるようになった。その後,2001(平成13)年度入試からセンター入試の成績を利用して合否を決定する入学試験も実施することにした。

 この「センター方式」による一般選抜入試の導入は,武蔵大学の入試における大きな変革であった。それまで1万人台であった受験者数が1998年以降段階的に減少し,2000年には6千人台にまで減った。センター方式の導入はそうした受験生の減少傾向に大きな歯止めとなり,導入以降は1万人台を回復することとなる。02年には,経済学部で一般選抜方式試験日の4日目に経済・経営・金融の3学科試験日(チョイス)を設けた。翌03年には,「B方式」3科目入試とネーミングを変え,人文学部も実施に踏み切った。また,社会学部では,選択科目のみセンター試験の成績を利用する「センター併用方式」を実施した。04年には,社会学部で実施したセンター併用方式を経済学部の経済学科・経営学科と人文学部のすべての学科でも取り入れるとともに,経済学部で実施していた「C方式」2科目入試を廃止した。ちなみにこの年から社会学部にメディア社会学科が設置された。05年は,人文学部改組が行われたが,入試制度の改革は行われなかった。07年は,人文学部の英米比較文化学科のみがセンター併用方式をやめ2科目入試とした。

 08年には,センター併用方式をやめ,新たに「全学部日程」入試の導入に踏み切った。全学部日程入試とは,学部間の併願はできないが,学部内すべての学科を志望することが可能な入試方式で,入試日程も2月3日と「個別学部日程」入試よりやや早めに設定された。試験科目は2科目で,3科目受験した場合は,高得点の2科目を合否判定に使用し,設問はすべてマークシート方式とした。この新たな入試方式の導入は,04年まで1万人台であった受験者数が9千から8千前半まで落ち込んだことが主たる要因であった。その結果,この年の受験者数は1万5千に激増した。これは単に全学部日程入試の導入によって受験者が増えたためばかりではなく,この方式を取り入れたことによる相乗効果として,個別学部日程入試もほぼ全学部にわたって増加し,センター方式入試では前年度のほぼ倍の受験者数となったことが要因としてあげられる。また,こうした新しい受験方式の導入に合わせて,ホームページの全面リニューアルや『大学案内』の刷新などの広報体制の見直し,高等学校への訪問体制の充実ならびに学内の設備・環境の整備と美化に努めたことが受験生獲得の大きな要因となったと思われる。翌09年には,全学部日程入試を2月2日に設定し,学部間の併願を可能とした。そして金融学科を除く全学科において,センター方式入試に新たに「後期日程」(経済学部は3科目,人文学部・社会学部は2科目)の導入を図った。以降,受験者数は1万5千から1万6千を推移している。12年には,人文学部と社会学部において,「センター後期日程」入試に7科目型が導入された。

 18歳人口が200万人から120万人に減少したこの20年間を,武蔵大学は入試制度や教育方法の改善等によって乗り切ることができた。しかし,18歳人口は,2031年には87万人に減少し,大学進学希望者も50万人になるという推計もある。こうした大学を取り巻くさらなる厳しい環境をどう乗り越えていくのかが今後の大きな課題といえよう。

to-top