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Ⅲ 武蔵大学

研究体制

 大学が教育の場であることはもちろんであるが,その教育の内容を向上させるためにも,たえざる研究水準の向上が図られなければならない。この教育と研究の両者の調和のとれた発展こそが,大学を真に大学たらしめる所以であろう。武蔵大学の教職員・学生は,教育を充実させると同時に研究を推進するという課題に向かってこれまで努力を積み重ねてきた。

研究室

 初期の教員の研究室は,旧制高校時代と同じく専門ごとに分かれる相部屋であった。経済系の研究室の場合,大学創設から長い間,本館(現3号館)東側3階の四つの教室を改造して使用していた。それは,1室あたり数人ずつの大部屋タイプであった。共同研究室には長所もあったが,研究および教育指導の充実のためには個室が必要であり,それは大学設置基準の趣旨に沿うことでもあった。1963(昭和38)年には3階建ての研究棟が新築され,狭いながらも教員の研究室は個室となった。その後81年に現在の教授研究棟が建設されて研究室が広くなり(約21・),冷暖房が各室ごとに設置されたため,研究・教育上,研究室の利用範囲が広まった。その後の教員の増加にともない,現在,研究室は教授研究棟,5号館,9号館(科学情報センター棟)に分けて配置されている。

 経済関係では,63年から経済資料室が置かれていた。この施設は,旧図書館が手狭になったことから,経済関係の資料(年鑑・白書類)・雑誌(大学紀要を含む)を分離し,旧2号館に設置したのを始まりとする。その後81年に図書館棟2階に移転し,経済関係の資料・雑誌類を開架し,利用に供してきた。しかし,2003(平成15)年4月以後,資料・雑誌類も図書館で総合的に管理されることになったため,経済資料室は廃止された。ただし,経済学部の学生のためのグループタディルームは98年から5号館に置かれており,2007(平成19)年にリニューアルされて新しい時代のニーズに応えている。

 人文学部創設当初は,3号館に英文,仏文,独文,日文,社会の5学科・コースの研究室が置かれ,それぞれ研究委員の指示のもとに各1名の職員が管理運営にあたっていた。この研究室は,教員・院生・学部学生の教育研究上の交流の場であり,人文学部の特色になっていたが,図書の整理・管理などに限界があった。そのため,新図書館が81年に完成した時,五つの研究室はまとめて人文学部総合研究室に改組され,図書館棟の3階部分に置かれることになった。学科図書は図書館に移管され,集中的に管理されるようになった。

 その後,社会学科の学部としての独立にともない総合研究室は一時,人文・社会の両学部が共有する空間となったが,社会学部が7号館3階にグループスタディルームや実習室,PC室などから成る優先使用スペースを得たこと,またAV・外国語教育センターが管理していたAV資料が図書館に移管されることになり,図書館内にその収納および利用のためのスペースを確保する必要が生じたことを契機として,人文学部総合研究室は図書館から移転して,3号館2階にグループスタディルームとPC室を新たに設置して現在に至っている。なお,これらの施設は,必要に応じて学部を超えた利用に供されている。

学会

 1953(昭和28)年に武蔵大学学会が設置され,研究成果を公表する機関誌としての『武蔵大学論集』が創刊された。この学会は,武蔵大学の学術研究体制の中心となるものであり,『武蔵大学論集』を58年には年2回刊から4回刊へ,さらに63年度より年6回刊とした(95年度以後,年4回刊に戻る)。別に『武蔵大学紀要』(刊行期間:63~68年)を創刊して,教養科目担当専任者の研究発表の場とした。『武蔵大学論集』は,2012(平成24)年度現在第60巻通巻294号になった。大学の10周年以後10年ごとに発行されている記念論文集には学会員の研究テーマや関心が示されている。

 人文学部増設後,武蔵大学学会は武蔵大学経済学会と武蔵大学人文学会に分かれ,人文学会は69年に『武蔵大学人文学会雑誌』を創刊した。同誌は年間4号刊行されており,12年度現在第44巻・通巻175号に至っている。同誌は,専任・非常勤を問わず教員が研究成果を発表する場として機能しているが,大学院生の研究論文も査読を経て掲載に至ることがあるし,学部の卒業論文の題目ならびに執筆者名も毎年度,収録している。01年度には『武蔵大学大学院人文科学研究科論集』が発刊された。翌年度の第2号からタイトルを『武蔵文化論叢』と改めたこの大学院生の論集は,当初は投稿資格を博士後期課程在籍者に限定していたが,その後,前期課程在籍者および修了者にも門戸を開き,その他の部分的な投稿規程の改正を経ながら,12年度現在第12号まで刊行を継続している。掲載論文はすべて,大学院で授業を担当している専任教員の査読を経たものであり,大学院生の研究業績充実に向けての努力を応援するシステムとして一定の貢献を果たしてきた。

 社会学部の創設後,人文学会から独立した武蔵社会学会は,99年度に社会学論集『ソシオロジスト』を発刊した。1年1号のペースで,現在第15巻・通巻15号(12年度)まで発行された。この論集には,『人文学会雑誌』と同じく学部の全卒業論文のタイトルと執筆者名の他,学部独自の評価基準で表彰した卒業生の名を載せている。大学院博士課程の院生には,修士論文を発展させた論文を『ソシオロジスト』に発表するよう指導している。

 また,01年以後,学会が主体となって,様々な社会学副読本や叢書シリーズを刊行している。01年には,ソシオロジスト別冊として教員たちによる『私の社会学』を,03年には,ソシオロジスト編集委員会編『社会学と過ごす一週間』と『メディア社会学レポート』を刊行した。次いで,06年には,『変わりゆく社会と人権』を刊行した。さらに,11年度からは,「現代の社会学とメディア研究」という全6巻からなる叢書シリーズを企画し,すべての専任教員が執筆する共著の教科書作りに取り組むこととした。まずは,学部1年生を対象に『ゼミで学ぶスタディスキル』という大学での学び方入門書を刊行したうえで,現在は『パブリックコミュニケーションの世界』,『アイデンティティと社会意識』,『メディアプロデュースの世界』の3点が刊行されている。これらの書籍は,専門課程へ進学した3年生を対象に,コース進路別のテーマ領域に合わせて配布された。

 経済学会・人文学会・社会学会とも機関誌を発行するだけでなく,研究会を随時開催して教員・大学院生の研究交流の場としている。経済学会では年間約10回程度外部講師による「経済セミナー」を実施して外部との研究交流を図るとともに,特別研究員を終えた経済学部教員による「研究成果報告会」を開催して学部内における研究活動の活性化を促進している。また,人文学会の研究会は年2回,夏季と冬季に行われており,その報告者と報告題名は『人文学会雑誌』に掲載されている。社会学会が毎年開催する研究会と総会とは,修士論文中間発表会とともに,教員・院生その他が分野を越えて議論を展開し,学問的な刺激の機会となっている。

特別研究員制度

 教員に,大学の経費負担によって海外へおもむき学術文化を調査・研究する機会を与える海外派遣研究員制度は,1964(昭和39)年度に設けられた。その後,国内において調査研究を行う専任教員を対象とする国内研修制度も設けられた(経済学部は76年度以降,人文学部は78年度以降)。以上の二つの制度は89年度に全面改正されて,武蔵大学国外・国内研究制度となり,さらに97年度に再度全面改正されて武蔵大学特別研究員制度となった。特別研究員になった教員は,1年間の研究期間を保証され,海外または国内で研究に専念できる。対象となる人数は教員の1割以内で,研究終了後に,研究成果を公表する義務がある。

研究出版助成

 専門書の出版事情が悪化するなかで,専任教員の研究成果の刊行を容易にするため,1963(昭和38)年に出版助成制度が設けられた。2012年末までに助成をうけ『武蔵大学研究叢書』として刊行された図書は157冊を数えている。この制度は一定の冊数の買取り助成の形をとっており,単著だけでなく編著や翻訳書も対象として,3学部で広く活用されている。

武蔵大学総合研究所

 武蔵大学総合研究所が発足したのは,1989(平成元)年4月であった。国際的視野に立ち,社会・文化に関する問題を総合的に調査・研究することにより,学術の振興に寄与することを目的としている。現代社会のかかえる様々な問題を解明するために,学科,学部,大学,国籍の壁を越えた活動を意図したものであった。調査・研究活動は,各研究プロジェクトによって担われたが,統一テーマは「環境・都市問題」「情報化・国際化に関する諸問題」「社会変動とコミュニケーション」「比較」「グローバリゼーション」「評価」「格差」「流動化」であった。その研究成果の一部は,『武蔵大学総合研究所紀要』(90年以降毎年刊行)に発表されている。各研究プロジェクト・チームは,武蔵大学のメンバーの他に,テーマに応じて他の大学・研究所などの研究者(外国の研究者を含む)によって構成され,広い研究交流の場になっている。

 また総合研究所では,地域住民や練馬区に立地する団体,企業との連携を図るため,研究所が主催する研究会を実施している。2012(平成24)年現在,「MMS研究会(武蔵メディアと社会研究会)」および「武蔵コミュニティ・ビジネス研究会」の二つの研究会が常設され,活発に研究会,シンポジウムなどを開催している。

 さらに総合研究所では,11年度において,大学における研究成果を広く世界的に公表するため,「武蔵大学学術機関リポジトリ」を立ち上げ運用していくことを決定し,13年2月に運用が開始された。

 学術文化の国際交流は,研究所の課題の一つであった。国際交流委員会(02年度以降は国際センター)と協力して,講演会,研究会を主催(共催)するとともに,海外研究者の受け入れ機関の役割を担うこともあった。総合研究所は,当初の目的どおり,学部間,大学間,国家間の壁を越えた活動を展開してきたが,研究の成果は教育にも活かされている。今後は武蔵大学の研究センターとしての役割を強化する方向で検討が進められている。

  • 武藏のあゆみ
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