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Ⅲ 武蔵大学

教職課程・学芸員課程

教職課程

《教職課程の創設》

 1949(昭和24)年に大学が開設されて以降,整備・検討されるべき課題の一つに,教職課程の設置があげられてきた。当時,学生のなかには,卒業後の就職のために中学・高校の教員免許状の取得を希望する者も少なからずいた。また,教員養成は,国民の次世代育成という大きな文化的役割を果たす視点からも意義は大きい。さらに,教員免許取得は,学生募集という面からも重要であり,教職課程の設置は早い時期から求められていた。

 こうした状況のなか,56年度に入って,経済学部に教職課程を設置する方針が決定し,翌57年4月1日付で認定された。免許状の種類および免許教科は,中学校一級普通免許状「社会」「職業」,高校二級普通免許状「社会」「商業」であった。

 武蔵大学は,それ以来,少人数ではあるが教育界に優れた教師を確実に送り続けてきた。

《教職課程の拡充》

 武蔵大学の特色である少人数教育を生かし,建学の理想「自ら調べ自ら考える力を養う」ことを目指す教育は,教員養成教育でも生かされ,人間性豊かな教員の育成を目指すユニークな実践が行われた。その一つとして山村生活の実態調査とそれに基づく「僻地教育実習」などの特色ある教職課程教育の展開もあった。

 69年4月に人文学部が創設され,大学院経済学研究科が設置された。それにともない,新たに教職課程の認定を受けたものを含めて,免許教科は次の通りとなった。すなわち,人文学部では,欧米文化学科の中学校一級普通免許状(英語,独語,仏語),高校二級普通免許状(英語,独語,仏語),日本文化学科の中学校一級普通免許状(国語),高校二級普通免許状(国語),社会学科の中学校一級普通免許状(社会),高校二級普通免許状(社会)であり,それに経済学研究科で高校一級普通免許状(社会)が加わることになった。さらに,74年4月の大学院人文科学研究科の設置にともない,人文科学研究科に高校一級普通免許状(英語,独語,仏語)が認定された。

 こうした教職課程の拡充にともない,教職課程履修者数も増加し,「教職に関する専門科目」,「教科に関する専門科目」の開講科目群の充実が求められてきた。特に,教職課程履修者の多い人文学部が学年進行で完成に近づくにつれ,事務運営および指導体制の強化が強く要請されるようになった。これを踏まえ,経済・人文両学部教授会において「教職課程委員会の設置について」(70年10月)が承認された。委員会は原則として両学部の各学科から1名の委員と教職課程専任教員によって構成された。これによって,2学部体制のなかでの教職課程教育が軌道に乗っていくことになった。さらに,教職課程事務担当者として教職課程係を設けるとともに,中学・高校の現場教育に多年の経験を有する優れた人材を教職課程嘱託として迎えて陣容を充実し,経済・人文両学部教授会との綿密な連携のもとで,全学的な指導体制を整えた。75年度には,教職課程は事務専任職員1名,嘱託1名(中学校教師経験者)ならびに教職課程担当専任教員2名により構成されることとなった。

 1970年代以降,教育現場には校内暴力など指導の困難な状況が現れてきた。それを受けて文部省は,教員の免許基準の引き上げを教育職員養成審議会(教養審)に諮問した。そうした行政側の動きに対応すべく,私立大学の教職課程担当者間の連携も求められてきた。そこで,私立大学における教員養成の社会的責務と重要性に鑑み,相互に研究を深め協力することによって,戦後の教員養成の大原則である開放制免許制度における教師教育の充実に寄与することを目指し,全国私立大学教職課程研究連絡協議会(全私協)・関東地区私立大学教職課程研究連絡協議会(関私協)および東京地区教育実習研究連絡協議会(東実協)が80年4月に創設された。武蔵大学の教職課程は,設立準備委員会から積極的に参加し,協議会等で重要な役割を果たしてきた。

 80年代に入っても教育荒廃の状況はおさまらず,「校内暴力」「いじめ」「不登校」「学級崩壊」など,学校における教育指導の困難な状況の克服の方途として教員の資質能力の向上が求められた。こうした状況のなかで教育職員免許法の改正(88年)が行われた。改正の要点は,免許状の種別化,免許基準の引き上げ,教職課程担当必要専任教員数の制定(教育の本質,教育の内容・方法,教育の心理,担当)などであった。98年6月にも教育職員免許法の改正が行われた。

 なお,98年度に社会学科が社会学部として独立し,人文学部は比較文化学科を新設した。さらに,社会学部にメディア社会学科[2004(平成16)年度設置]が加わった。これらの学部・学科の課程認定も順次進行し,教職課程の拡充が図られていった。その後,3学部体制は変わらないものの,2011年度よりスタートするカリキュラム改革のなかで,人文学部各学科の名称が変更となり,新たに課程認定を行うとともに,教職課程カリキュラムについても実践系科目の拡充をはじめとして,再編成が進められた。こうして,現段階において,武蔵大学の学部学科・大学院研究科で課程認定をうけた免許状の種類は,表1および表2のとおりである。

《教職へのアクセス状況》

 1958(昭和33)年3月,最初の教職課程修了者18名を教育界に送り出して以来,この54年間に教員の免許状取得者約4,200名,そのうち現在教員として活躍しているもの約800名に及ぶ。最近の教員採用状況は,かつてより緩和されたとはいえ,中等教育の教員採用状況は未だに厳しい状況が続いている。そのようななか,武蔵大学の教職課程履修者の教職への就職は次第に好転しつつある。2011(平成23)年度の場合,教職課程修了者47名中,何らかのかたちで教職にアクセスしている数は20名(教職のキャリアアップを目指して大学院や特別支援・初等教員免許課程等への進学者を含む)に及ぶ。目指せば,夢は叶うという状況が生まれつつある。

 ところで,1993年8月,教職課程修了者の同窓会「白雉教育会」が結成され,断続的に活動を発展させながら今日に至っている。現在,白雉教育会は,年2回の研究会を学内で実施し,同時に,現役学生の実践的指導力向上や教員採用試験準備への支援に尽力している。そのような側面支援も,教職課程の充実に貢献している。

表1 武蔵大学で取得できる教員免許状の種類

学部 学科 所得できる免許状の種類 免許教科

経済 経済 中学校教諭1種免許状  ◎社会

      高等学校教諭1種免許状 地理歴史・公民・商業

   経営 中学校教諭1種免許状  ◎社会

      高等学校教諭1種免許状 地理歴史・公民・情報・商業

   金融 中学校教諭1種免許状  ◎社会

      高等学校教諭1種免許状 公民・商業

人文 英語 中学校教諭1種免許状  ◎英語・◎社会

学部 英米文化 高等学校教諭1種免許状 英語・地理歴史

   

   ヨーロッパ文化 中学校教諭1種免許状  ◎英語・◎独語・◎仏語・◎社会

           高等学校教諭1種免許状 英語・独語・仏語・地理歴史

   日本・東アジア文化 中学校教諭1種免許状 ◎国語・◎社会

             高等学校教諭1種免許状 国語・地理歴史・公民

社会 社会 中学校教諭1種免許状 ◎社会

      高等学校教諭1種免許状 地理歴史・公民

   メディア社会 中学校教諭1種免許状 ◎社会

          高等学校教諭1種免許状 地理歴史・公民

◎印は介護等体験実習が7日間必要

表2 武蔵大学大学院研究科で取得できる教員免許状の種類

学部 学科 所得できる免許状の種類 免許教科

経済学研究科 経済・経営・ファイナンス専攻 高等学校教諭専修免許状 公民・商業

       中学校教諭専修免許状 社会

人文科学研究科 欧米文化専攻 高等学校教諭専修免許状 英語・独語・仏語・地理歴史

               中学校教諭専修免許状  英語・独語・仏語・社会

        日本文化専攻 高等学校教諭専修免許状 国語・地理歴史

               中学校教諭専修免許状  国語・社会

        社会学専攻  高等学校教諭専修免許状 公民

               中学校教諭専修免許状  社会

《教職課程経営の諸課題》

 21世紀に入り,波状的に継続する教育改革の一つの焦点として,教師教育改革が浮上してきた。すなわち,教育基本法改正(06年)・教育三法改正(07年)と相前後して,「今後の教員養成・免許制度のあり方について」(中教審答申)が提出され,教職の制度改革が進行した。そのもとで,教員養成課程の質向上のための諸施策(「教職実践演習」の導入を含む)や教員免許更新制度の導入等が図られた。また,12年には「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(中教審答申)が発表され,教職の「修士レベル化」の推進方針や「基礎免許・一般免許・専門免許」というかたちで教員免許の上進制度の制度設計が提示され,教職をめぐる制度改革は大きな転換期を迎えている。

 そのようななか,武蔵大学の教職課程も様々な内発的な改革を推進してきた。

 その第1は,指導体制の充実である。現段階での教職課程の指導スタッフは,専任教員3名(教育の本質,教育の心理,教育の内容・方法,担当),嘱託職員2名(中学・高校の校長職経験者),事務職員2名,客員教授1名(高校校長職経験者)によって構成されている。こうしたチーム構成の特長を生かして,教育実習に向けた実践的指導力向上のためのプログラムや教員採用を目指すキャリア実現のためのプログラムを構築してきている。

 第2は,教職課程経営の改善に向けた改革である。戦略的な目標探究のため,教職課程調査員を雇用(10年度後期)し,関係機関への訪問調査を含めた研究を実施した。その提起を参考にしつつ,初等教員免許へのガイダンスや特別支援教員免許への進学ルートの開拓に道を開いてきた。また,10年度には,教職課程経営委員会を発足させ,全学的な教職課程経営の体制を構築した。さらに12年度には,教職課程研究協力者制度を創設し,学校現場や教育行政・教育専門家との連携による教職課程経営の拡充を図りつつある。

 第3に,教職課程の中長期ビジョンの検討である。ここでは,第二次中期計画(11年度~)における教職課程の充実とも関わって,ハードウエアの拡充が求められている。1号館新築にともなう移動に連動して教職課程施設の8号館移転が実現した。そこでは,スペースの一角に模擬授業教室を創設し,活用が図られている。また,教員免許制度改革への対応に関わって,「修士レベル化」への対応につき,学内の各レベルでの課題の洗い出し等の議論を組織しつつある。

《教員免許状更新講習》

 教員免許更新制の導入にともなう制度改革によって,教員養成に関わる各大学等に更新講習の設置が求められるようになった。武蔵大学では,2008(平成20)年度の「試行」にひきつづき,09年度より本格的に更新講習を実施してきた。

 更新講習の実施にあたり,学長を委員長として,「教員免許状更新講習委員会」を立ち上げ,検討を行った。その結果,更新講習に取り組む意義として,・免許更新制度の趣旨に照らし教職専門性の社会的担保を担うこと,また・教職課程設置大学としての社会的責任を果たすこと,さらに・大学の社会的貢献の一環として位置づけ,併せて・中等学校教員との「縁づくり」の機会ともなるとの判断から,更新講習に取り組むこととなった。

 制度化された更新講習は,全体で30時間以上(必修領域が12時間以上,選択領域が18時間以上)のプログラムを必要とする。武蔵大学では,隔年ごとに必修領域-選択領域を開講することによって,合わせて要件を満たすように,講習をデザインした。

 なお,講習に関する受講者の事後アンケートでは,いずれの項目でも,「よい・だいたいよい」が90数%に及び,好評を博してきた。更新講習の詳細については『武蔵大学教職課程研究年報』23号(09年)および26号(12年)にまとめられている。

学芸員課程

 1980(昭和55)年に課程が設置されてから,33年が経過した。修了者の数は626名を数える。2012(平成24)年には,文部科学省の博物館法施行規則の改正にともない,新しい学芸員課程に対応した必修科目の改訂を行った。この改訂は学芸員となるための実質的教育が多くの大学で行われていないという状況を是正することを目的としていたが,武蔵大学においては,学芸員の職責や社会的役割に関して履修学生が主体的に学習する指導体制を設置当初から確立し,現場を知る教育に力点を置いていたため,改訂後もカリキュラムの内容に実質的な変更は生じていない。

 特に武蔵大学では,「博物館実習1・2」の実習において,作品の扱いや調書の作成(撮影等の学習も含む),キャプション(作品解説等)や展示台の作成,オープンキャンパスでの学芸員課程の広報,博物館・美術館訪問に際しての依頼交渉,報告書の作成などについて,計画から実施まですべて履修学生が調査・議論を重ねて行っている。この主体性を重視した教育の継承は,他大学に類をみない本課程の誇るべき伝統として特筆しておきたい。「博物館実習3・4」には,「館園実習」という博物館・美術館での実習が課せられているが,武蔵大学の履修学生に対する評価は良好で,09年度の卒業生の場合のように館園実習時の対応が評価されて,実習先の美術館から望まれて学芸員となった事例もある。この10年間では,33名が県立博物館をはじめとする博物館・美術館の学芸員となって活躍している(常勤14名,嘱託・非常勤24名)。その他,展示施工業者など,博物館・美術館関連業種に職を得た者も少なくない。このように博物館およびその関連分野へ就職を果たした卒業生の数は,美術・美学などの専門学科をもたない大学としては,突出しているといってよい。

 現在,履修生にとって不可欠となっている実習室は,07年に2号館2階に新設され,10年に同館地階に移転したが,12年度末に8号館4階に再移転した。なお,学内に博物館相当施設を設置する動きは近年とみに活発で,将来的には武蔵大学でも実習室に加えて博物館法に則った展示室の設置が強く望まれるところである。それが実現すれば,館園実習を学内で行うことができるようになるのみならず,企画展の実施などを通して教育の飛躍的な向上が図られ,さらに関連機関,同業種,地域との交流とその拡大が期待できるからである。

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