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Ⅳ 新制武蔵高等学校・中学校

学習環境の整備

学級増加(学則定員の変更)

 学則定員は,当初1学年につき中学は150名,高校は160名で発足したが,実情は,中学・高校ともに50名の3クラス制であった。しかし1クラスの運営人数について,中学は山上・海浜学校の運営計画から48名という数が出てやがて定着し,高校については,53名まではやむを得ないとする時代が長く続いていた。この時代には高校入学時に5~7名程度の生徒を,他の中学校から試験によって編入させていた。その後1クラス定員を減らそうという時代の趨勢に立脚して,1965(昭和40)年,中学は48名のまま,高校は45名4クラスとし,その差の分だけを高校で新入学させることとした。増クラス初年度は,1学期間,新入生だけを1クラスとしたが,内部進級者と少しでも早く馴染ませる方がよいとの結論を得て,次年度以降,入学時から新入生・内部進級者とも4クラスに均等に配分してクラス運営を行った。その後,第二次人口増の時代には,臨時定員増が正式に承認された。しかし85年頃からの全国的な児童・生徒数の減少を背景に,それへの対処が東京都と私学側で協議され,申し合わせにより各私学は募集人員を一割削減するという趣旨に沿って募集を始めた。しかしなかなか徹底されず,受験生が学則定員に満たない私学も増加し,都側では学則定員の厳守を強く指導するようになった。武蔵も高校新入生16名程度の入学しか認められない状態となった。また,特に数学,理科の公立中学との進度差の拡大の問題等もあり,96年,中学の学則定員を1クラス40名の4クラスとして高校の学則定員に揃え,2000年,高校入試を廃止して,完全6年制の中学・高校となり,現在1クラス44名を上限として運営されている。

奨学金

 在校中に諸般の事情で経済的困難に陥る生徒もある。こうした場合,高校生に対する日本育英会等公的機関の奨学金では十分でないこともある。武蔵では1959(昭和34)年以来,学校関係者の寄付などを原資に高校中学奨学基金団を設け,必要とする生徒・家庭に援助を行ってきたが,74年には学校法人としても奨学金貸与規定が設けられ,従来の基金団との二本立てとなった。99年からは会計上学校の奨学制度に一本化し,より充実を図ることとした。2012年現在,給付15万8千円,貸与63万2千円が最大限受けられる。

 

保健室

 保健室は1993(平成5)年から専任養護職員2名体制となっていたが,2004(平成16)年,養護教諭体制復活,専任養護教諭1名採用,複数体制への準備期間を経て,07年,専任養護教諭2名体制となり,現在は非常勤者を含め常時複数体制で多様なニーズに対応している。

 学校医は,内科校医(産業医兼務)が月4回,および精神衛生校医が月2回来校し,生徒・教職員ならびに保護者の相談に対応している。歯科校医や学校薬剤師からも適宜助言を受けている。また,相談室との連携も日々の重要な仕事となっている。

 定期健康診断は,05年から完全外部委託とし,健診後のフォローに力を入れている。

 日々の業務では,けがや体調不良,アレルギー疾患等の救急対応や,成長期の身体面・精神面の相談も多くなっている。

 OA機器の発達でPCが生活に溶け込み,携帯電話も生活に不可欠となった。この急激な電子機器の普及は,ゲームや幅広い情報で生徒たちの関心を集め,便利な半面,生活に影響を与え様々な変化を起こし,運動不足や睡眠不足の原因となり学校生活にも少なからず影響を及ぼしている。また,生徒の昼食は弁当持参か,食堂や売店を利用しているが,弁当持参割合は学年が上がると減っている。ファストフードやコンビニを手軽に利用できる環境にあるが,生徒の栄養のバランスも課題である。

 学校と家庭との協力,また地域との連携も今後ますます重要になると思われる。

相談室

 1960年代の高度経済成長期を迎える頃から,わが国の中学・高校生のなかにも,精神面での問題を抱える生徒の数が増え始めた。武蔵においても,ごく少数の生徒にではあるが,従来のような教師による教師の立場からの対応では,適切に処理し得ぬ事例が現れ始めた。この文明病の微かな兆候が見えたと思われる時期に素早く対応できるよう,62(昭和37)年から臨床心理学の専門家をカウンセラーとして迎えた。これは予防ないし早期治療の効果をかなりの程度まで果たし得たようであった。その後,一時中断したが,現在では保健室に中学・高校生を対象とする精神衛生相談担当医師(学校精神衛生医)を校医の一人として委託し,生徒・保護者のカウンセリングを行っている。近年,小児喘息やアトピー性皮膚炎患者の増加等により,保健室を利用する生徒の数も年々増え,96年に保健室を拡大整備して対応してきた。

 その後,保健室を訪れ,気軽にカウンセリングを受ける生徒・保護者の数も増加の傾向にあった。その状況に対応すべく,2005(平成17)年10月,2年近くに及ぶ議論の末,事務棟2階(現在の教務委員会室)に相談室を設置した。週3日,昼休みに開室,部屋には教員が最低1名待機し,生徒との雑談に,あるときは生徒からの相談に対応した。

 翌06年9月,さらに増えていくであろう相談に対応すべく,旧分割教室1・2を改装し,新たな恒久的な相談室を設置した。この頃になると,月曜から金曜の昼休みおよび週2回放課後に開室し,担当教師が生徒の相談に対応した。相談室が生徒を受け入れていることにともない,昼休みに保健室を訪ねる生徒は少なくなった。保健室と相談室を生徒は使い分けているようである。

 07年4月からはスクールカウンセラーを迎えた。週2日のみの来校であったが,生徒・保護者の相談,生徒・保護者へのワークショップ,教師へのコンサルテーション,研修に当たってもらった。09年度からは週3日の来校となり,より細やかに生徒や保護者,教師の相談に対応できるようになった。引き続き,教師も相談室運営に関わり,昼休みには生徒への対応にも当たっている。

 今後も,学校医,スクールカウンセラー,保健室,相談室のより一層密な連携によって,皆が安心して学校生活を送ることができる環境が整備されていくであろう。

施設の拡充

《「新棟(現・西棟)」の建設》

 学校教育の必要から施設の充実を図るのは当然のことであるが,具体的な方策となるとなかなか難しいところがある。近年も運動施設,校外施設などの拡充が検討され実際に改築されているが,校舎となると1969(昭和44)年の高中校舎移転以来,本格的な建設が行われたことはなかった。それが具体的になったのは,中学4クラス制と高校編入の廃止のためと言える。中学の各学年に一つずつ教室を増やすために社会科研究室を置く施設が必要になり,従来の懸案事項を含めて校舎を増築することになった。

 建物は,地下には専用の音楽教室,各階には,体育・芸術(1階)・英語(3階)・社会(4階)の研究室のほか,多目的教室(1階),コンピュータ教室(2階),演習室・講義室(3・4階)を配置して96年12月に完成し,翌年4月には4クラスの中学新入生を迎えた。この新棟(現・西棟)には歩行困難な生徒を想定してエレベータも設置されている。また建物が西向きで校庭に面していることから,窓を開けないで生活することを想定して各部屋にエアコンが設置された。その後,エアコンは2001年から翌年にかけて中学1年から高校3年のすべての教室にも設置された。

《図書館棟の建設》

 図書館は生徒・教師の研究・教育のために欠くことの出来ないものである。旧制武蔵高等学校時代の図書館は,大学設置とともに「武蔵大学図書館」と名称を変え,現在は大学の重要な一角を担っている。しかしその歴史的経緯から,図書館は学園全体の共有する施設として,大学生ばかりでなく高中生も利用してきた。

 その後,次第に学生数および蔵書数が増加して図書館が手狭になるとともに大学と高中が図書館に求める機能の相違などの問題が生じてきた。そこで大学では新たに建設された8号館の地下に図書館機能の一部を移転する方策が採られ,高中でも自分たちの使いやすい図書館を建設することになった。ただし,この高中図書館は,大学から独立した図書館を作ろうというものではなく,学園全体の図書館機構の中で「高中分館」を建設するというものである。図書館棟は新棟(現西棟)の南側,集会所を含む場所に建設され,2004(平成16)年春完成した。

 蔵書に関しては,すでに高中の各教科研究室などに7万冊を超える書籍があった。それらをできるだけ図書館に集め,生徒・教師が利用しやすいようにした。この結果,規模・運営管理組織などの点で,中学・高校の図書館としては全国にほとんど例のない規模のものとなった。

《新棟の計画》

 図書館棟建設以後,高中に関して,新たな施設建設は遠い将来と考えていたが,2009(平成21)年2月に耐震診断を行ったところ,理科棟,管理棟に耐震上大きな問題があることが分かった。急遽,その夏に仮の耐震工事を行ったが,震度6以上の地震に対しては,充分な耐震レベルではない状態であった。

 そのようななか,理科棟,管理棟の移転が検討され,候補地として現在の軟式テニスコート上に建設する案が浮上した。環七沿いの高中プールも老朽化が進み,数年後には使用不可能な状態になると分かり,新棟建築とともにプールもつくることが検討された。学園内に大学プールと高中プールの二つものプールが必要かとの議論もあったが,中学1年,中学2年が同時並行で水泳授業を行うため,必要との判断となった。

 新棟建築に関しては様々な案が検討されたが,プールを別につくること,新棟は軟式テニスコート上につくることを,高中として考えていた。

 しかし,11年になり,練馬区条例により20メートル以上の建物が建てられないことが判明し,建築計画を根本から見直さなければならなくなった。12年11月現在,この問題は解決していない。高中の建築計画としては,その問題は一応棚上げとし,13年度夏に理科棟,管理棟の耐震工事を計画している。高中プールについても検討しているが,移転先はまだ確定していない。

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