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通史編

本扉

I 根津育英会武蔵学園

II 旧制武蔵高等学校の歴史

III 武蔵大学の歴史

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年表

奥付

主題編

本扉

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第6章 学園創立百周年をむかえて
新生武蔵のグランドデザイン

武蔵学園が2022(令和4)年度に創立100周年を迎え、次の100年に踏み出すにあたり、改めて武蔵高等学校中学校の教育の現状や目指す方向性について、「新生武蔵のグランドデザイン」という一枚の紙に落とし込む作業を、全教職員が2019 年度の1 年間をかけて実施した。その結果として、2020 年9 月5 日に公開されたのが下掲の図である。

 新生武蔵の基本的な考え方は、これまでの武蔵の良さ(例えば豊かな自然環境、学習環境、少人数を生かした生徒間あるいは生徒と教師の距離の近さ、根底に流れる自調自考の精神、学問を大切にする気風とリベラリズムなど)を大切にしながら、必要な進化(例えば希望進路の実現、さらなるグローバル化の進展など)

を遂げていこうというものである。

 全体の方針としては、「世界をつなげる自調自考のエンジン」を身に着けさせることを武蔵の教育のミッションとして掲げ、中学入試で求める生徒像を「学ぶ意欲があり、知ることや考えることを楽しんで、積極的に取り組む生徒」とし、また武蔵で育てたい人物像を「独創的で柔軟な真のリーダーとして、世界をつなげて活躍できる人物」とした。

 教育活動の構成としては、武蔵の根幹である「学問」(教科教育)を「学びの芯」とし、さらに建学の「三理想」の現代的解釈ともいえる「キャリア教育」「グローバル市民教育」「リーダーシップ教育」を「学びの幹」と位置づけた。「芯」とそれを取り巻く「幹」には、武蔵のシンボルツリーでもある大欅の如く、生徒一人ひとりがしっかりと大きく育っていく姿を重ね合わせることができるだろう。

 芸道や武道で、それぞれの道を究めるには「守」「破」「離」の段階があるといわれる。「守」は型を守り、型を覚えるという段階。次に「破」は型を破り、自分であれこれ試行錯誤をする段階。最後に「離」は型から離れて、自分なりの流儀・個性を発揮する段階。つまり、「自分で考えろ」といってもいきなりは無理であり、とりわけ基礎基本については、それが型として守られるようになるまで、反復して身に着けていく必要があることになる。

 この「新生武蔵のグランドデザイン」では、「武蔵生の成長物語」についても意識した。中1 から高3 まで、上記「守・破・離」の段階で成長していくイメージを持ちながら、「学びの芯」や「学びの幹」のそれぞれの段階での「到達目標」を書き入れ、これまで他とのつながりが見えにくかった様々な取り組み(たとえば、山上学校、みなかみ民泊実習、第2 外国語、高校総合講座など)についても、「幹」全体の中に位置づけることで、その意義や今後の可能性を見つめ直した。

 先に掲げた「進化」の具体的方向性としては、「進路希望の実現」や「さらなるグローバル化の進展」に加え、「武蔵らしいアナログの教育とICTによるデジタルとの融合」が挙げられる。

 まず「進路希望の実現」について、武蔵はこれまでも、目先の大学受験だけに捉われるのではなく、10 年後、20 年後に活躍できる人間、後伸びする人間を育成してきた。その方向性は変わるものではないが、ともすると高校卒業後の進路に学校は関わらないという誤解があったかも知れない。しかし、たった一度の人生において、どんな志を立てるか、そしてその志を実現するために学力の向上も含め、どのように準備するか。遠い将来を見通しつつ、近い将来の大学進学にも学校として向き合うことは重要であろう。このため、進路指導委員会を中心に、「進路指導のグランドデザイン」を策定し、志を立てる面についてはキャリアガイダンスの充実、学力向上の面については模試の分析結果の教員間での共有や長期休業中の補講などを行っているところである。

 また、武蔵の大きな柱である学問(教科教育)においても、各教員の個性を発揮するとともに教科としての系統性も示すため、教科ごとのカリキュラムをより体系化した「各教科のカリキュラム・デザイン」を策定し、生徒や保護者各位に明示した。これは、各教科において、「学びを楽しみ、学びをつなげ、学びを深められる」よう、中1 から高3 までの「守」「破」「離」の各段階で、身に付けさせたい力や学習内容、具体的な到達目標を明らかにしたものである。

 カリキュラム・デザインは今後も改訂を進めていく予定であるが、在校生徒諸君には、自分の置かれている立ち位置を確認しながら、それぞれの「成長」に役立ててほしいという要望が込められている。

 グローバル教育については、新型コロナウイルス禍の状況下では足踏みせざるを得なかったが、いまやグローバル化は、全員にとって必要不可欠な問題である。このため「思い切って外へ もっと先へ」のスローガンのもと、武蔵のグローバル教育の質的

充実とともに、量的拡大を図ろうとしているところである。

 具体的には、従来から取り組んできた第2 外国語の学習・国外研修を充実させるとともに、大学や学園と連携した高大連携やREDプログラムの促進、さらに夏休み等に海外での研究やサマーセミナー参加などを金銭的に後押しする海外活動チャレンジ奨学金を活用していく。これらは、仕組みは整備されたので、コロナ禍が終われば自ずと加速していくであろう。

 さらに、ICTの活用がある。武蔵はこれまでも、本物に触れる教育、原理原則を大事にする教育を進めてきた。利便性や効率が幅を利かせる時代だからこそ、武蔵はこれら「アナログ」の良さを大事にしてきたし、その姿勢は今後も変わらない。一方で、デジタル化の進展は我々の生活を豊かにし、世界を拡げてくれている。コロナ禍を機にオンライン授業の導入をはじめてから、状況は大きく変わった。2022 年度は、中1 から高1 までが同種類のタブレットを持つこととなった。これまでは紙媒体で行なっていた連絡報告や調査集計も、容易かつ迅速に行なわれるようになった。それぞれの授業の場面でも、ツールとしてのタブレットを有効に活用することにより、武蔵の本質を追究する教育はさらに深化すると思われる。武蔵の生徒も教職員も学ぶことに対して貧欲であり、今後、想像を超える創意工夫が積み上げられていくものと期待できよう。

 このグランドデザインを踏まえて、改めて武蔵の良さや強みを在校生も教職員も再認識し、「新生武蔵」としてさらに進化していきたいと願っている。

Musashi Global Days 2022 ―国外研修記念同窓会の開催―

 1988(昭和63)年に国外研修制度が創設されて以降、ドイツ・オーストリア・フランス・中国・韓国・イギリスの各提携校に派遣した生徒は、2022年現在で400名を越えている。この卒業生たちが、武蔵百周年を機に行われた“Musashi Global Days” の行事の一環として一堂に会する「国外研修記念同窓会」が2022年8 月27日、池袋のホテルメトロポリタンを会場に開催され、約120名の派遣生OBが参集した。コロナ禍のため提携校の教員のほとんどは招待できなかったが、代わりにビデオメッセージが会場に届けられた。

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